挨拶

こんばんは.理学部物理学科3年のくてです.Physics Lab. 2022ではトポロジカル物性班の班長を押し付けられましたやらせていただいてます.養命酒[^1]に救われています.よろしくお願いします.

何の班?

物性分野のうち,物質のトポロジカルな側面に関連した内容を学ぼうぜ,という班です.またトポロジカル物性に関係ないものでもええやん,という緩いノリでも活動しているつもりです.具体的な班の活動としては強相関電子系,超伝導,その他のグループに分かれて各々の興味や目的に別れて学んでいます.また展示で発表する実験[^2]のための準備も進めています.

物質のトポロジカルな側面

物質の電子状態は波動関数で記述されます.その波動関数がHilbert空間上で非自明なトポロジーを持つような物質の存在が実験と理論から確かめられています.トポロジーとは一口に言うなら「形」を意味します.「マグカップとドーナツは穴の数が一致するので同じとみなす」という説明を耳にした方は多いことと思います.それです.波動関数を波数空間という抽象的な空間で見てやると「形」によって分類することができるのです.これが「トポロジカルなんとか」のお気持ちです.

トポロジカル不変量の一例(2バンド1次元系の場合)

波動関数の「形」がトポロジーだと雑に言いました.ではトポロジーを分類する具体的な指標を見てみましょう.あくまで紹介なのでさらっと流します.

絶縁体を考えます.絶縁体の1つのバンドのみが占有状態にあるとき,電気分極$P_\rho$はBerry接続$a(k)$[^3]を用いて

$$ P_\rho = \int_{-\pi}^\pi \frac{dk}{2\pi}a(k) $$

と表せます.[*1]これを2バンドの場合に拡張します.

2バンド1次元系を考えましょう.Hamiltonianが周期$T$を持ち,時間反転対称性を持つ,すなわち

$$ H[t+T] = H[t] \\ H[-t]=\Theta H[t]\Theta^{-1} $$

[^4]という対称性の課された系で考えることにします.2バンドで考えるのでBerry接続は一般に$2\times 2$行列で表されるので

$$ a(k) \to \bm{a}_{\alpha\beta}(k) $$

となります.特に,対称性を先述のように課しているの積分は

$$ P_\rho = \underset{\coloneqq P_1}{\int_{-\pi}^\pi \frac{dk}{2\pi}a_{11}(k)} + \underset{\coloneqq P_1}{\int_{-\pi}^\pi \frac{dk}{2\pi}a_{22}(k)} $$

のように簡単な形になります.つまり各バンドからの寄与$P_1, P_2$の和の形に直せます.このように現れてきた$P_1, P_2$の差$P_\theta$とBloch関数$\ket{u_{\alpha,k}}$[^5]を用いて定義される行列$w_{\alpha,\beta}$

$$ P_\theta = P_1 - P_1, w_{\alpha,\beta} = \bra{u_{\alpha, -k}}\Theta\ket{u_{\beta, k}} $$

を考えてやりましょう.するとなんやかんやあって

$$ P_\theta = \frac{1}{i\pi}\log\left(\frac{\sqrt{w_{12}(0)^2}}{w_{12}(0)} \cdot \frac{w_{12}(\pi)}{\sqrt{w_{12}(\pi)^2}}\right) $$

という表式に変形できることが示せます.$\sqrt{w^2}/w$ の形になっているので,$\log$の中身は$\pm1$になります.したがって偏角を$0\leq\theta\leq2\pi$に制限すれば,$P_\theta = \log(\pm1)/i\pi = 0, 1$となります.この表式のもとで時刻$t=0からt=T/2$の間の$P_\theta$の変化分$\Delta$

$$ \Delta = |P_\theta(T/2) - P_\theta(0)| $$

を見てやると,$0か1$というとびとびの値を取ることが確かめられます.この$\Delta$が今考えている系の「形」,すなわちトポロジーを分類する指標です.$\Delta = 0$の場合が自明な場合で,$\Delta = 1$の場合がトポロジカルな場合と呼ばれます.[^6]この例の$\Delta$は$0,1$のニ値であり,$Z_2$指数と呼ばれています.

終わりに

堅苦しくなったのでこの辺にしておきます.つい最近年が明けた気がするのですが,もうクリスマスです.僕の中ではクリスマスは大きな鶏もも肉とショートケーキを堪能する日と決まっています.皆さんはどのようにお過ごしの予定でしょう.[^7][^8]気が触れないようにお過ごしください.

参考文献

[*1] L. Fu and C. L. Kane: Phys. Rev. B 74 (2006) 195312.

[*2] 『トポロジカル絶縁体入門』,安藤陽一,講談社

脚注

[^1] 寝る前または食前に20 mL飲みましょう.一日3回が目安です.